2026-08-20
「うちは特殊」の正体——業務とローカルルールを切り分けると何が見えるか
Argora編集部
DXの現場で必ず出てくる「うちの業務は特殊」という言葉。本当に特殊なのか、それとも長年のローカルルールが業務を特殊に見せているのか。切り分けの視点から考える。
「特殊」の中身を問う前に
「うちの業務は特殊だから、システムには乗らない」。DXの支援現場でこの言葉を聞かない週はない。言葉自体を否定するつもりはない。本当に特殊な業務は確かに存在する。
しかし多くの場合、「特殊」の中身を丁寧に掘り下げると、別の景色が見えてくる。特殊なのは業務の本質ではなく、その業務を取り巻くやり方——ローカルルール——であるケースが少なくない。
業務の本質は、意外なほどシンプルだ。受注し、処理し、納品し、請求する。その骨格は、業種を問わずよく似ている。では何が「特殊」に見せているのか。答えの多くは、長年の運用の中で積み重なったローカルルールにある。
ローカルルールはなぜ「業務」に見えるのか
ローカルルールとは、特定の担当者や過去の経緯によって定着した手順や取り決めのことだ。悪意があって作られたものではない。むしろ、現場がその時々の問題を解決しようとした結果として残った痕跡である。
問題は、時間が経つにつれてそれが「当たり前」になる点だ。誰もそのルールの起源を知らない。問い直す機会もない。気づけば「うちはそういうやり方をする会社」という認識になっている。
よくある例を挙げると、次のようなものだ。
- 見積書は必ずFAXで送る(「取引先がそう言っていた」——いつの話かは不明)
- 月次の集計は特定の担当者がExcelでやる(「その人が一番詳しいから」)
- 受注後の確認電話を二回かける(「以前ミスがあったから」——その仕組みはすでに変わっている)
いずれも、業務の本質に由来する理由ではない。業務フローが言語化されていない組織では、こうしたローカルルールが業務のフリをして定着しやすい。その積み重なった状態を指して「うちは特殊だ」と表現することになる。
切り分けるための問いを設計する
業務の本質とローカルルールを切り分けるには、次の問いを順に立てることが有効だ。
- この業務の目的は何か。 一文で答えられるか。
- この手順は、その目的に本当に必要か。 なくなったら何が困るかを問う。
- そのやり方の理由は何か。 「昔からそうだから」以外の答えが出るか。
「特殊かどうか」ではなく、「なぜそうしているか」を問うことが、切り分けの出発点になる。
この作業は、社内だけで完結させるのが難しい。長年の慣習が「前提」になっているため、内部の目には見えにくくなっているからだ。カン・コツに依存した業務は、引き継ぎの困難さとして顕在化する前に、業務定義の曖昧さという形でまず現れる。外部の目を使って棚卸しすることが、現実的な最初の一手になる。
切り分けが進むと、「やはりここは本当に特殊だ」と確認できる部分と、「これはシステムで十分に対応できる」と気づく部分の両方が見えてくる。前者は設計上の例外として扱えばいい。後者を先に動かせれば、DXは動き始める。「全部が特殊」という認識が解けた時点で、選択肢は増える。
DX伴走支援「しぼる」では、業務とローカルルールの切り分けをプロセスの起点に置いている。「何を変えられるか」の前に、「何が本質で何が慣習か」を整理することから始めるためだ。
FAQ
よくある質問
うちの業務が本当に特殊かどうか、どう判断すればいいですか?
各手順に「なぜそうするか」を問い、明確な理由が出てこなければローカルルールの可能性が高い。業務の目的を一文で言語化し、各手順がその目的に必要かを問い直すことが判断の出発点になる。
ローカルルールとは何ですか?
ローカルルールとは、特定の担当者や過去の経緯によって定着した手順や取り決めで、業務の本質には含まれない運用上の慣習を指す。長年続けてきたからこそ「業務そのもの」に見えやすい点が問題だ。
業務とローカルルールを切り分けるにはどうすればいいですか?
業務の目的を一文で言語化し、各手順について「なくなったら何が困るか」「なぜそのやり方か」を順に問うことが有効だ。社内だけでは慣習が前提になりやすいため、外部の視点を入れることが現実的な方法になる。
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