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Argoデジタル

2026-08-20

引き継げない業務が、会社をもろくする——カン・コツ依存が事業にもたらすリスクの正体

Argora編集部

業務がベテランの勘で回っているとき、それは事業の脆弱性のサインだ。デジタル化以前の問題として、言語化と標準化が必要な理由と、再現性を高めることが事業の安定に直結する理由を考える。

「この工程はAさんに聞けばわかる」——そういう業務が、どの会社にも一つや二つある。長年の経験から培われた判断力は本物だが、それが言葉になっていないとき、会社は静かに脆くなっている。

カン・コツで動く業務には、ふたつの問題が潜んでいる

継続性と改善性。カン・コツ依存の業務には、この二層のリスクが同時に存在している。

  • 継続性のリスク:担当者が休んだとき、辞めたとき、あるいは体調を崩したとき、同じ品質で業務を続けられる人間が社内にいるか。多くの場合、答えは「いない」か、根拠のない楽観だ。
  • 改善の不可能性:判断の根拠が言葉になっていない業務は、評価することができない。何がうまくいっていて、何がボトルネックなのかが見えない。問題を直す以前に、問題を発見する入り口が塞がれている。
属人化は、特定の人への依存ではなく、業務の可視性の喪失である。

この二つは別々の問題ではない。判断が言語化されていないから引き継げず、引き継げないから改善できない。根はひとつだ。

言語化より先に自動化すると、問題が固定される

デジタル化の前に言語化を行わないと、暗黙の前提がそのままツールに封じ込められる。これが「デジタル化の順序」の核心だ。

言語化されていない判断をシステムに乗せると、その前提が正しいかどうかの検証ができないまま業務フローが固定される。後から見直そうとしても、「なぜそうなっているか」が誰にもわからない設計だけが残る。担当者が変わるたびに「昔からこうなっています」という説明しかできない状態が続く。

デジタルツールは、言語化された業務を速くすることには長けている。しかし、言語化されていない業務を賢くすることはできない。

DXの成果が見えない本当の理由でも整理したように、業務フロー図がない状態でシステムを入れても、何が改善されたかを後から説明できない。言語化と可視化は、ツール選定よりも先に来る作業だ。

正しい順序は次のようになる。

  1. どの工程がカン・コツに依存しているかを洗い出す
  2. 担当者本人と一緒に、判断基準を言葉に落とす
  3. 別の担当者が手順書を使って実際に動かし、抜け漏れを補完する
  4. 再現できることを確認してから、初めてデジタル化を検討する

この順序を守ることで、ツール導入後に「現場が使えない」「誰が設計したかわからない」という状況を避けられる。

再現性を整えることが、事業の安定につながる

業務の再現性を高めることが、事業の安定に直結する。これは、DXの準備ではなく、経営そのものの話だ。

再現性が高い業務は、採用・育成のコストを下げる。新しい担当者が加わっても一定の品質が出せる。担当者の休暇取得が可能になり、特定の人への負荷集中が減る。複数人が同じ水準で動ける体制は、事業が外部環境の変化を受けても継続できる力を持つことを意味する。

これは規模の問題ではない。社員が数人の会社でも、一工程の判断基準を書き出すことから始められる。完璧な手順書を一度に作る必要はなく、小さく始めて積み上げる方法で十分だ。

DX伴走支援を頼む前にやることでも触れているが、外部の力を借りる前提として、自社の業務がどう動いているかを把握している必要がある。言語化なしには、支援も機能しない。

「カン・コツで動いている工程がある」という現状を、個人の能力や属人的な性格の問題として見るのをやめることが、最初の一歩だ。それは業務の再現性に投資してこなかった経営上の課題であり、逆に言えば、ここを整えることで得られる事業の安定は、ツール導入よりもずっと確実なものになる。

言語化の具体的な進め方については、しぼる:DX伴走支援でもご相談いただける。

FAQ

よくある質問

カン・コツに頼る業務をデジタル化するにはどうすればいいですか

まず業務を言語化・標準化してから自動化を検討するのが正しい順序です。ツールを先に導入すると、暗黙の前提が固定されたまま業務フローが凍結されてしまいます。

属人化を解消するための最初のステップは何ですか

担当者本人に「なぜその判断をしたか」を言語化してもらうことが出発点です。チェックリストや判断基準の一覧を作ることで、再現可能な手順に落とし込んでいきます。

中小企業でも業務の標準化はできますか

できます。大企業のような全社的な業務改革でなくとも、一工程の判断基準を書き出すだけでも十分な効果があります。小さく始めて積み上げる方法が現実的です。