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2026-08-14

求人票に書けない仕事は、採れない——DX採用を壊す「期待の記述」

Argora編集部

地方企業のDX求人票に頻出する「全社変革をリードできる方」。実際の業務は基幹システムの保守と紙の削減だ。期待と業務のずれが採用をどう壊すのか、構造から整理する。

「全社のデジタル変革をリードできる方を募集します」

こういう求人票は珍しくない。だが、「全社のデジタル変革をリード」が実際に何を指すのか、書いた側が説明できるかどうかは別の話だ。応募者がその文言を見て、自分の一日の仕事を想像できるかというと、おそらく難しい。

「DX人材」という言葉に、業務が入っていない

「DX人材」は職種名ではなく、期待の総称だ。

ITに詳しく、業務改善ができ、現場の抵抗を乗り越えられて、経営層とも話せる。そういう人物像を要件として並べると、一人の人間に収まらない。それでも求人票は一枚に収まるので、書けるのは「変革をリードできる方」という抽象語だけになる。

求人票が機能しない根本には、「書き方が分からない」のではなく、「要件を定義できていない」という問題がある。業務の輪郭がなければ、書く素材がそもそも存在しない。

応募者の立場で考えると、自分が何をするのかが見えない求人には手を出しにくい。面接に進んでも、企業側の期待と応募者の想定がかみ合わない。採用に至ったとしても、入社後のギャップが生じる確率が高くなる。抽象的な求人票は、企業と応募者の双方に損をさせる。

技術を評価できる人が、面接にいない

求人票の問題とは別に、評価する側にも構造的な課題がある。

一人目のDX担当者を採用する場面では、社内に技術を評価できる人間がいないのが普通だ。スキルシートを読んでも、記載された経験が実際の業務にどう活きるか判断できない。面接の場で技術的な深掘りもできない。結果として、選考の決め手は「感じのよさ」や「熱意」になる。

評価できる人がいない採用は、人を見ているのではなく、印象を見ている。

これは採用担当者の力量の問題ではない。評価基準がない状態では、印象評価にしかなれないという構造の問題だ。

対策として考えられる選択肢を整理すると、次のようになる。

  • 外部の伴走支援者やアドバイザーを面接に同席させ、技術評価の部分を補う
  • DX伴走支援を先に導入し、実際の業務を通じて「必要な人材像」を見極めてから採用に動く
  • 採用ではなく業務委託から始め、仕事の輪郭をつかんだうえで内製化を検討する

採用の前に評価の軸を持つ。その順序を整えるだけで、面接の精度は変わる。

一人分の枠に、複数人分の仕事が詰め込まれている

求人票の問題のうち、もっとも見落とされやすいのがこれだ。DX推進は、一人で成立する仕事として設計されていないことが多い。

業務プロセスの整理、ツールの選定と導入、現場への定着支援、データの管理、経営層への報告。これらを同時に担うのは、一人では難しい。それでも求人票には「DX推進担当(一名)」と書かれる。採れたとしても、その人材は短期間で疲弊するか、仕事の一部しか動かせない状態になる。

採るべきは人材ではなく、体制だ。何を内部でやり、何を外部に出すのか。その分担を先に決めてから、一人に任せる範囲を絞る。設計がなければ、求人票に書く内容が生まれない。

「理想のDX人材」を待たずに進めるでも触れているが、一人のスーパーマンを探すのをやめることが、推進体制の設計の出発点になる。内部・外部・伴走の組み合わせを先に考えることで、採用要件は初めて絞り込める。


採用がうまくいかない企業に「求人票を書き直しましょう」と言っても、根本は変わらない。求人票は結果物であり、問題はその手前にある。DX人材が採れないなら、設計から変える——その発想を持つことが、採用を再起動する出発点になる。

FAQ

よくある質問

地方企業がDX人材を採用するにはどうすればいいですか

採用の前に「何をやってもらうか」を業務単位で書き出すことが先決です。「DX推進」という役割名ではなく、具体的な作業内容を定義できてはじめて、求人票が機能します。

DXの求人票に書くべき内容は何ですか

担当する業務を具体的に列挙することが基本です。「全社変革をリード」ではなく、「受注管理の入力業務をクラウドツールに移行し、現場への定着支援を行う」のように、作業と成果を書きます。

社内にDXを評価できる人がいない場合、採用面接はどう進めればいいですか

技術評価を社内で完結させようとしないことが重要です。外部の伴走支援者を面接に同席させる、あるいは採用よりも外部委託から始めて仕事の輪郭を先に見極める方法があります。