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2026-08-13

「出せない額」ではなく「出すと困る額」——給与逆転が採用を止める

Argora編集部

地方企業がDX人材を採用できない理由の多くは、財務の問題ではない。給与テーブルが引き起こす社内逆転と、技術者の居場所がない等級制度——この二つの構造的な問題と、その整え方を整理する。

「出せない額」ではなく「出すと困る額」——給与逆転が採用を止める

給与テーブルが採用を止めている。この問題の核心は財務ではない。DX人材に市場価格を提示すると、既存の中堅社員の給与を上回る。その逆転を恐れて、本来は支払える額を出せない状態に陥っている。制約は予算ではなく、社内の整合性だ。

地方の中小企業で経営者が市場相場を正確に把握していないケースも多い。求人票の額が実勢から大きく外れていても、応募がゼロで続くまで気づかない。応募がなければ相場を検証する機会もなく、「うちには来ない」という諦めに転じてしまう。気づいても「そうは言っても」と据え置かれることが少なくない。

賞与の原資が既存事業の業績に連動する構造も、リスクを拡大する。DXの成果が出るまでには時間がかかる。その前に本業の不調が報酬を揺らせば、採用候補者はそのリスクを先読みして選ばない判断をする。「頑張れば上がる」が機能しない職場だと判断される。

管理職しか上がれない構造——技術者が定着しない理由

採用が実現しても、等級制度が別の壁になる。昇進の道が管理職一本の会社では、上位等級に上がるほど現場から離れ、手を動かす仕事が減る設計になっている。

技術者にとっての成長は、より難しい課題を自分で解けるようになることだ。管理職化を強いられる構造では、それができない。採用できたとしても、数年で去る流れになりやすい。給与を確保して採用しても、等級制度が定着を妨げれば、採用コストが回収できないまま終わる。

DXを推進する体制をどう組むかを考えることと、等級設計の見直しを並行させなければならない理由がここにある。「理想のDX人材」を待たずに進めるでも触れたように、採用を前提にしない体制設計は現実的な選択肢だ。だが、採用した人材が定着する制度がなければ、採用できた後に別の問題が始まる。

不利な条件を前提に、それでも動くための手順

制度を根本から変えるには時間がかかる。だが手順を見直すことで、動き出せる余地はある。

  1. 市場相場を把握する:求人票を出す前に、同職種の市場給与を調査する。採用エージェントへの問い合わせや公開調査を使い、自社給与との乖離幅を経営者が数字で把握する。感覚ではなく、比較できる数字を持つことが先だ。
  2. 逆転の範囲を特定する:既存社員のうち、どの等級が逆転するかを見極める。全体ではなく一部の等級であれば、手当の上乗せで補完できる場合がある。
  3. 専門職等級を設ける:管理職とは別の昇進ルートを定義する。「手を動かしながら上がれる」ラインを制度化することで、採用後の定着率が変わる。
  4. 外部リソースを使いながら進める:制度改定の期間中も、外部の伴走支援を活用してDXを止めない。
「採れないから進めない」ではなく、「進めながら採れる制度をつくる」という順序が、現実的な出発点になる。

給与と等級の問題は、採用設計全体の見直しと切り離せない。採用の設計から変えるアプローチと合わせて参照してほしい。制度整備の期間中もDXを動かし続けたい場合は、しぼる(DX伴走支援)が一つの選択肢になる。

FAQ

よくある質問

地方企業がDX人材に市場価格を払えない本当の理由は?

財務力よりも社内整合性の問題が大きく、DX人材への高い給与提示が既存社員との逆転を生むため、出せるはずの額を出せない状態に陥っている。

DX人材が地方企業に定着しない原因は何ですか?

等級制度が管理職一本で、技術者が「手を動かしながら昇進できる」ルートがないことが主因です。

DX人材が採用できない状況でもDXを進める方法はありますか?

外部の伴走支援を使いDXを動かしながら、並行して等級制度と給与設計を整備する順序が現実的な打ち手です。