Argoデジタル

2026-09-21

「動いているから触るな」を乗り越える——改修できないシステムで事業を前に進める方法

Argora編集部

ベンダーの撤退、高騰する見積、社内の暗黙のタブー。この3つが重なるとき、システム改修は現実的でない。改修しないまま業務を動かすための回避戦略を整理する。

システムへの改修要望が出るたびに、話が止まる会社がある。担当者がベンダーに問い合わせると返答が遅く、見積が届いても金額が予算の想定を大きく超えている。会議室では「動いているんだから触らないほうがいい」という声が上がり、そのまま議題が流れていく。

この状況は珍しくない。そして放置されやすい。「いつか直す」という前提のまま年度が変わり、担当者が替わり、問題だけが積み重なっていく。

改修が現実的でないシステムを診断する3つのサイン

改修が現実的でないシステムには、共通のサインがある。以下の3つが重なっているなら、正面からの改修は現実的でないと判断してよい。

  1. ベンダーが撤退・縮小している。担当者が次々と変わり、問い合わせへの応答が遅くなる。保守契約が更新されていても、システムを深く把握している人間が実質的にいなくなっている。
  2. 見積が出てこない、または桁が合わない。一見小さな修正でも想定をはるかに超える金額が提示される。「まず調査費から」と言われ、そこで発注が止まるケースも多い。
  3. 「動いているから触るな」が社内の合言葉になっている。過去の改修で不具合が生じた記憶が、暗黙のタブーを育てている。新しい担当者もそれを引き継ぎ、改修の話を切り出さなくなる。

こうした状況がいつの間にか形成される背景は、提案書で読むベンダー選定の失敗でも触れている。問題は、この状態を「しかたない」として受け入れたまま動かないことにある。「いつか直す」という前提が、最もコストを生む。

改修しないまま前に進む3つのアプローチ

改修を諦めることは、業務を止めることではない。システムの外側で動きをつくることはできる。

① データを外に出す

多くの旧来システムはCSVやExcelでの出力機能を持っている。そのデータを起点に、別のツールで集計・連携・可視化を行う。システム本体には触れず、情報の流れだけを変える方法だ。保守コストをかけずに現場の手間を減らせる場合がある。

② システムの手前に入口を設ける

システムへの入力作業の前に、フォームや承認フローを置く。RPAや軽量なWebツールを組み合わせると、旧システムへの直接入力を後ろに回せる。操作の手間を減らしながら、本体には触れない。

③ 業務フローを見直す

システムに業務を合わせようとするのではなく、手順・タイミング・役割分担を変える。デジタルの問題に見えていたことが、実は業務の手順や習慣の問題だったということは少なくない。

システムが変わらないなら、業務の使い方を変える。その発想の転換が、長く止まっていた現場を動かすことがある。

これらに共通するのは、「本体に触れない」という制約の中で考えることだ。制約が明確になると、むしろ選択肢が絞られて動きやすくなる。DXの伴走支援「しぼる」では、こうした業務起点の整理から一緒に取り組んでいる。

小さく始めて、移行の土台をつくる

回避アプローチを選ぶ前に、現状を一度整理する時間を取るといい。確認するのは3点だ。

  • そのシステムを使っているのはどの業務か
  • その業務で何が止まっているか、あるいは手間がかかっているか
  • 止まっている理由はシステムの限界か、業務の手順か、人の問題か

この整理だけで、「改修が必要な問題」と「改修しなくても解決できる問題」が分かれてくる。全体を一度に変えようとしない。一つの帳票、一つの手順から試す。小さく動かして効果を確認し、範囲を広げていく。

こうした積み重ねは、将来システムを置き換えるときの土台にもなる。移行先の要件がぼんやりしたまま発注すると、同じ問題を繰り返しやすい。次のベンダー選定では、IPAの評価表に発注側が加えるべき3項目のような視点も、早い段階で手元に置いておきたい。

FAQ

よくある質問

改修できないレガシーシステムかどうかはどう判断しますか

ベンダーが見積を出せない・出ても桁が合わない・社内で「触るな」が合言葉になっている、この3つが重なれば改修は現実的でないと判断してよい。

システムを改修せずに業務を前に進めるにはどうすればよいですか

データを外に出して別ツールで活用する・システムの手前に入力フローを設ける・業務手順そのものを見直す、の3つが主な選択肢です。

レガシーシステムの置き換えはいつ検討すればよいですか

回避策で業務負荷が下がったタイミングが移行計画を立てる現実的な起点です。追い詰められた状態で発注すると判断が歪みやすくなります。