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Argoデジタル

2026-09-08

「失敗は流通しない」——上流工程に横のつながりが生まれにくい理由

Argora編集部

業界の横のつながりが強い領域でも、企画や調達といった上流工程には情報が回りにくい。なぜ失敗知識は流通せず、各社は同じ轍を踏み続けるのか。その構造を読み解く。

情報が流通する領域と、しない領域

業界によっては、横のつながりが驚くほど厚い。年に何度もセミナーや交流会が開かれ、競合他社の担当者と名刺を交わすことも珍しくない。そこで流通するのは、主に営業やマーケティングの話題だ。「このアプローチで受注につながった」「このツールを試したら顧客の反応が変わった」——成功事例は、思いのほか業界を横断して広まる。

しかし、同じ会社の中でも企画や調達、生産管理といった上流工程の担当者は、社外にほとんど顔を出さない。業界のイベントに呼ばれるのも、代理店や営業窓口であることが多い。上流の担当者同士が集まる場は少なく、会社をまたいだつながりは意外なほど薄いままだ。

「つながりが強い業界」と「つながりが薄い職域」は、同じ会社の中に共存している。結果として、ある領域では情報が活発に流通し、別の領域ではほとんど動かない。流通しない領域では、各社が同じ失敗を個別に経験し直すことになる。

なぜ失敗は共有されないのか

失敗が流通しない理由は、構造的なものだ。大きく三つある。

  1. 競争上のリスク——失敗事例は、競合他社に自社の弱点を知らせることになる。わざわざ話す動機が薄い。
  2. 担当者個人のリスク——失敗を外部で語ることは、自分の評価を下げる行為とも受け取られかねない。発信にはコストが伴う。
  3. そもそも言語化されていない——失敗を言葉にする習慣がなければ、共有できる形にならない。AIへの指示が書けないときでも触れたように、組織の中で「正解」や「失敗の構造」が言語化されていないと、知識の移転は起きない。

「仕様書がある」は安心の根拠にならないと似た構造がここにもある。「前にやった」という記憶があっても、参照できる形で残っていなければ次の担当者には伝わらない。それが社内でも起きているなら、社外へはなおさら届かない。

「繰り返しのコスト」を業界単位で考える

ひとつの会社が同じ失敗をするのは、学習の問題だ。しかし、業界の中の多くの会社が同じ失敗をそれぞれ独立に繰り返しているとすれば、それは個別の問題を超える。

たとえば、デジタル導入プロジェクトで躓く典型的なパターンがあるとする。

  • 担当者が変わるたびにゼロから検討し直す
  • ベンダーとの仕様調整で同じ手戻りが発生する
  • 現場と上流の認識がずれたまま進み、後半で巻き返せなくなる

これらは多くの会社が経験する失敗だ。しかし一社の中に「ノウハウ」として閉じられてしまうと、隣の会社には届かない。

業界全体で見ると、同じ学習コストが何十社分も積み重なっていることになる。

デジタル化・DX関連のプロジェクトでは、この傾向がとくに顕著だ。新しい領域であるほど業界内に実績のある担当者が少なく、失敗した経験は共有するより隠す方向に働く。「他社が試みたら失敗した」という情報があれば回避できた投資も、流通していないために各社が独立に経験することになる。

この非効率を変えるのは制度や仕組みだけでは難しい。上流工程の担当者が集まれる場をつくること、失敗を言語化する習慣を社内に根付かせること——その積み重ねが、少しずつ「流通しない知識」を動かしていく。

自社の上流工程に「横のつながり」がどれほどあるか、一度確かめてみてほしい。DX伴走支援(しぼる)では、他社事例をふまえながらこうした構造的な課題を整理することもできる。

FAQ

よくある質問

なぜ上流工程の担当者は業界横断のつながりを持ちにくいのか

企画・調達・生産管理などの上流工程は社外に出る機会が少なく、業界の交流イベントも営業・マーケ寄りの内容が多いため、横のつながりが生まれにくい構造にある。

失敗事例が業界内で共有されにくい理由は何か

失敗事例は競合に知られたくない情報であり、担当者個人にとってもリスクがあるうえ、そもそも言語化されないまま終わることが多いため、自発的な発信がほとんど起きない。

各社が同じ失敗を繰り返すリスクをどう減らせばいいか

他社の事例を持つ伴走支援者との対話を通じて、直接は共有されない失敗の構造を間接的に学ぶことが、現実的かつ有効な手段になる。