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Argoデジタル

2026-09-09

「なぜやるか」を誰も知らない工程——DXより先に問うべき業務の根拠

Argora編集部

承認印、二重入力、紙保存——「なぜ必要なのですか」と聞いても誰も答えられない業務が、多くの職場に静かに残っている。DXを進める前に、まず「理由のない工程」を探すことが、本当の業務改善の入口になる。

「なぜ必要なのか」が答えられない業務の正体

承認印を三人からもらわないと次に進めない。同じデータを二つのシステムに手で入力する。月末には紙で印刷してキャビネットに保存する。取引先への連絡はFAXで行う。

こうした業務を一つひとつ取り上げて「なぜ必要なのですか」と聞いてみると、返ってくる答えは意外なほど薄い。「昔からそうしている」「前任者が決めたと聞いた」「特に問題がないから変えていない」——理由ではなく、経緯だけが返ってくる。

業務に明確な根拠がない場合、誰かが意図して設計したわけではないことが多い。かつて必要だった社内規則がなくなった。担当者が替わるたびにルールが上書きされた。「念のため」で始めた確認作業がそのまま定番化した。こうした積み重ねが、今日の「誰も説明できない工程」を生んでいる。問われることなく続く業務ほど、その存在感は薄く、改善の対象にもなりにくい。

デジタル化は工程を速くするだけで、工程そのものを消しはしない

DXの現場でよく聞く失敗に「紙をPDFにしただけ」「ExcelをSaaSに移しただけ」という話がある。これは揶揄ではなく、ある構造的な問題を映している。

デジタルツールは工程を速くする。しかし工程の必要性を問い直す機能は持っていない。「承認印が本当に三人分必要か」を決めるのはツールではなく、組織の判断だ。根拠のない工程をそのままデジタル化しても、その工程は速くなるだけで残り続ける。

「誰が決めるか」を問わないとDXは止まるという構造は、ここにも現れる。業務フローを設計する場面で「その工程を廃止してよいか」を決める人がいなければ、DXの議論は「今の業務をどうシステムに乗せるか」に終始し続ける。

業務をデジタル化する前に、その業務が必要かどうかを問うステップを、設計の上流に置く必要がある。

計算式が壊れる回数が教えてくれることと同様に、業務の限界は「痛みが生まれる場面」でしか可視化されない。問題が表面化しないまま続く工程ほど、棚卸しの対象になりにくい。

「理由のない仕事」を探す三つの問い

どこから手をつければよいか。大規模なヒアリングや業務分析を始める前に、次の三つの問いを各チームに投げてみるところから始められる。

  1. 「この工程がなくなったら、何が困りますか」

答えに詰まる工程は、根拠が薄い可能性がある。「困ること」を具体的に言えない工程は、現時点で価値を生み出していないかもしれない。

  1. 「この工程は誰のために存在しますか」

内部の都合なのか、顧客のためなのか、法令に基づくのか。受益者が不明瞭な工程は、起源を調べる価値がある。

  1. 「最後にこの方法を見直したのはいつですか」

「一度も見直していない」という答えが返ってきた工程は、環境が変わっても更新されていない可能性が高い。

これらの問いは、業務担当者を責めるためのものではない。悪意があって作られたわけでも、誰かが怠けていたわけでもない。組織が「問う機会」を持たなかっただけだ。問いを立てること自体が、改善の入口になる。

業務の棚卸しから伴走を始めたい場合は、しぼる:DX伴走支援でご相談を受け付けている。現場の実態を踏まえながら、「理由のない工程」を整理するところから一緒に考えたい。

FAQ

よくある質問

DXを進める前に業務棚卸しをすべき理由は何ですか

理由のない工程をそのままデジタル化しても速くなるだけで残り続けるため、まず工程の根拠を問い直す必要があります。

「理由のない業務」はどうやって見つければいいですか

「この工程がなくなったら何が困りますか」と聞いてみることが最初の一歩で、答えに詰まる工程を優先的に見直します。

業務の棚卸しはどこから始めればいいですか

受益者が不明な工程か、最後に見直した時期が不明な工程から着手するのが効果的です。